歴史画

歴史画といっても、自由な発想で自由に描いたものです。イメージといってもいいでしょう。


貧女の一灯
 高野山奥の院にこの伝説があります。お照という貧しい娘が自分の髪を売って献じた灯明が、いつまでも消えなかったという話。きぬのみちの絵は、それからはまったく自由にイメージを描きました。むしろ、紀元1世紀のパレスチナ、ガリラヤあたりの感じ。ボールペン描きを取り込み、Adobe PhotoDeluxeで加工。
イエスと大師
 どういうわけか、きぬのみちのイメージの中では、イエス様とお大師様が、かならずいっしょに出てくるのです。考えれば、イエスにはペルシャのミトラ信仰がかぶさっているし、ミトラは弥勒になって、弘法大師は兜卒天で弥勒とともにいるわけだし、べつに不思議なことでもないのです。ボールペン描きを取り込み、Adobe PhotoDeluxeで加工。
二人の供養者
 東博で開催された「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」に触発されて描きました。時代は2〜3世紀、場所はガンダーラのどこかの町。仏教寺院の傍らで、いましも二人の供養者が僧侶を出迎えています。ひとりはインド人、ひとりはクシャノ・パルティア人です。後ろにはギリシア神殿と衛兵の姿も見えます。
イエスと大師2
 水彩画を取り込み。熱で苦しんでいるときに感得したヴィジョンです。後ろには、またもやお大師様がいます。ナムファティーグ姿と、イエス様の肩に坐っているのは、いずれもきぬのみち自身です。イエス様はいつでも重荷を背負って下さいます。考証に忠実な形をした十字架の上には、クロとシロがとまっています。むしろ明るい行進なのです。
亀ヶ岡
 亀ヶ岡は、青森県西津軽郡にある縄文晩期の遺跡です。家の前の若夫婦は、狩の獲物のことでも話しているのでしょうか。夫は赤漆の柄に黒曜石の穂先の槍を携え、護符とそれから用途のわからぬ道具(実際の出土物)を提げています。妻は糸魚川の翡翠の首飾りをつけています。背後には雑穀か蕎麦を植えている畑、それになにかの果樹、そして貝塚が見えています。ボールペン画を取り込み、ペインターで加工。 

土方歳三義豊
「新選組!」を見始めて、ついに手を染めてしまいました。場所は五稜郭。一本木関門へと向かう直前の姿。左手に持つのは、「蟹目打ち」として知られる、フランス・ルフォシュー社製リボルバー。イメージとしては、ナポレオンの姿と、それから映画「グローリー」の、マシュー・ブロデリック扮する北軍指揮官です。ペインターで作成。

山南敬助知信
 初めて描いてみた幕末剣士。
 もちろん、モデルは堺雅人扮する山南敬助です。
「ぃヤ!」 という掛け声が聞こえていただければ成功です。
 水彩画を取り込み、Adobe PhotoDeluxe で加工。

土方歳三義豊2
 土方二作目。最後の突撃命令をかけているところのつもりです。函館のある道南地域は昔から和人地で、札幌などに較べ、はるかに本州に近い感じがするところです。それでもよく蝦夷地まで行き、あの荒々しい山野で戦ったものです。
 もし土方が生きていたら、この後、いったいどのようなはたらきをしたことだったでしょうか。ペインターで作成、Adobe PhotoDeluxe で加工。

アルカディアの近藤勇
 鶴川街道を歩く近藤の姿です。小野路の小島家へ出稽古に向う途中でしょうか、それとも日野の下佐藤家へと戻る途中でしょうか。動乱の時代の波はようやく多摩にも打ち寄せ始めていますが、若き近藤青年にとって、この地はいまだアルカディアであったことでしょう。ボールペン描きにペインターで彩色、Adobe PhotoDeluxe で加工。

函館の土方歳三
 冬の函館。短い休息の時間に半舷上陸した土方でしたが、そろそろ江差攻めの軍議のために、開陽丸に戻らねばなりません。前を合わせたフロックコートの中にナポレオンばりに手を入れ、片方の手で懐中時計を確かめた後、灰色の海を見やります。ボールペン描きを取り込み、ペインターと Adobe PhotoDeluxe で加工。
アヴァンギャルド
 ある晩、かんじゃーやーで、ピキ氏と「インターナショナル」の話になりました。シーサーズの世志恵さんが、サンシンで爪弾きました。その調べを聴きながら手近のマヂックを取り、そこらへんの紙に、酔いにまかせて描きました。その原画は、いまもかんじゃーやーのどこかに貼ってあるはずです。Art School Dabbler で作成。

伊東大蔵武明
 いわずと知れた高台寺党領袖。最初は鴨を描こうと思って二度ばかり挑戦したのですが、そのつど顔が優しくなって、結局甲子太郎になってしまうのです。大河の伊東はひどく陰険な印象ですが、実際にはなかなかの傑物だったようで、時とところを得ていたらと思います。ボールペン描きにペインターで彩色、Adobe PhotoDeluxe で加工。

水戸派の二人、甲子太郎と鴨
 どうしても土臭い多摩郷士に較べて、水戸派の人たちというのは、たとえそれが鴨であっても、伝統や教養の面で、やはりいささか洗練されてスマートに見えます。剣術もまた、神道無念流や北辰一刀流と、当代きっての流派を身につけています。ようやく鴨が描けました。またこの甲子太郎には、木津屋橋のイメージがほんの少しあります。ボールペン描きにペインターで彩色、Adobe PhotoDeluxe で加工。

綾瀬川の土方
 1868年(慶応4年)旧暦3月下旬、土方は近藤とともに綾瀬五兵衛新田の金子家を拠点と定め、旧幕の抵抗派を糾合して新選組の再起を期します。このとき土方は近くを流れる綾瀬川のほとりで釣りをしますが、その姿を見た土地の娘たちが「役者のようだ」と騒いだという逸話が残っています。江戸で奉公もした土方にはきっと瀟洒な雰囲気があったのでしょう。 ボールペン画、ペインターで着色、Adobe PhotoDeluxeで調整。

ゾロアスター
 P.R.ハーツ、奥西峻介訳『ゾロアスター教』(青土社)を読んで、すぐに描いてしまいました。教祖ゾロアスターはペルシア北東部の牧畜部族の生まれということなので、ここでの教祖の姿は、ペルシア、パルティア、ソグド風の衣装を組み合わせて、自由に描きました。背後はシルクロードのステップ風景、また有翼日輪は最高神アフラ・マヅダーの象徴です。ボールペン画、ペインターと Adobe PhotoDeluxe で調整。

ゾロアスター2
 ゾロアスター第2バージョン。ペインターによる彩色版です。やや図像儀軌を取り入れました。
 ゾロアスターの生きた年代は、釈迦や孔子と同じ頃とも、もっと昔のモーセと同じ位だとも言われているようです。

井真成
 
阿倍仲麻呂と同期に唐に渡りながら、志半ばで客死した留学生、井真成。時の玄宗皇帝にも惜しまれた、優れた人物だったようです。この人の墓誌発見のニュースは、新聞各紙を賑わせました。
 唐代の人物を描いているうちに、井真成のことが思い浮かんだので、そのイメージを表現しました。ボールペン画、ペインターで彩色、Adobe PhotoDeluxe で調整。

ミトラス神
 ミトラス神は、アーリア人の神格です。ペルシアからローマ帝国に伝わり、イエス像にもその性質が投影されています。シルクロードを伝わって東へやってくると、仏教に取り込まれ、未来仏マイトレーヤ、つまり弥勒菩薩になりました。まさに東西を結びつけた神様なのです。ボールペン画、ペインターで彩色、Adobe PhotoDeluxe で調整。

開 戦
 2006年9月、呉市の大和ミュージアムを見学しました。沈没した大和から引揚げられた遺物や、乗組員の手記といった展示物を見ているうちに、この絵の構想が浮かびました。アメリカ軍機は、低く垂れ込めた雲の合間から、まるでお座敷芸者のように「チョット」という風に顔をのぞかせ、ごま粒のように見えたものがたちまち大きくなったとは、元乗組員の証言にあるところです。また「敵は雷爆混合」とは、『戦艦大和ノ最期』の中に出てくる警告の叫びです。

匈奴の少年
 前漢代の青銅製の燭台からイメージを膨らませて描きました。この匈奴族の少年は奴隷として売られ、貴族の館で仕えています。松明を掲げて、夜の園遊に侍しているのでしょう。実物の燭台になっている匈奴はもっとずんぐりした童子で、顔もいかにも新モンゴロイド風です。ボールペン画、Adobe Photoshop Elements 4.0とPainter Essentials 3で調整。2007年2月。