井 真 成

 

 

 2004年10月11日の朝刊各紙の一面を飾った大ニュースに、阿倍仲麻呂と同期に唐に渡りながら、志半ばで客死した留学生の墓誌が発見されたという記事がありました。
 留学生の名は、井真成。日本での出自は渡来系の井上氏か藤井氏と思われ、唐朝の官僚として嘱望されていたが36歳で病死し、時の玄宗皇帝からも惜しまれたという、優れた才能を持った人物だったようです。

 この絵は唐代の人物を描いているうちに、井真成のことが思い浮かんだので、そのイメージを表現しました。
 場所は唐の長安の町のどこか。市場のあたりでしょうか、遠くには大きな寺の塔も見えています。
 夕暮れも近く、鳥もねぐらに帰っていきます。そろそろ各坊(坊は塀で区画された居住区)の木戸も閉まるころで、人間も早く帰宅しなければなりません。
 井真成は、さっきあきらめた品物をやっぱり買おうと思い直して、ペルシャ風連珠紋の織り出された錦の巾着を手に、はや遠ざかりかけた商人を呼び返すのです。

 ボールペン画、ペインターで彩色、Adobe PhotoDeluxe で調整。