散文詩・東欧兵士の夢

 

 

 
明け方の夢です。
 
時は20世紀のいつか、場所はたぶん東ヨーロッパ。
冬枯れの丘陵地か、低い山へ続く道。
長い難民の列が、丘の上へと追いやられていきます。
私はその列を見張る兵士。
リブのついた、ふちの広がったヘルメットをかぶっているような気がします。
灰色とらくだ色の中間の分厚めの外套、ベルトで腰を締めています。
両手で銃剣付きの小銃を、太腿の前に横たえて持っています。
丘の上で何が起こっているか、私は知っています。
私は難民の列とすれ違いながら、道の横を歩いています。
列から逃げないように見張るのが任務です。
平静な顔、無表情な顔、諦めた顔、さまざまな人々が通りすぎていきます。
私は怖くて顔を上げられません。
後ろの丘から、乾いた銃声が響いてきます。
私はうつむいて道を下っていきます。
そろそろ難民たちが、道を外れて逃げ出しそうです。
しかし、私は見て見ぬふりをするのです。
私の背後から、ひたひたと足音が聞こえます。
列の中にいた少女が、逃げていこうとしているのがわかります。
止めるのが私の任務です。
しかし、私は恐ろしくて顔を上げられません。
うつむいたまま、銃剣を横たえ、聞こえないふりをして、
枯れて黄色い丘を下っていくのです。

製作年月日:2000年5月
使用ソフト:アートスクール・ダブラー

 

 

 これは夢で見たままです。目覚めてすぐに、ピキ氏にメールしました。メールの文章が、そのまま散文詩になっていました。後でピキ氏に感想を聞くと、「前の晩、NHK20世紀の記録を観たでしょう」と、ぴたりと言い当てられました。7年後の今(2007年3月11日)、テレビで「エネミー・ライン」という映画を観て、そのことを思い出しました。ピキ氏は自分では知らないだろうけれど、神様のような人です。
「童話同人 ソムニウム」よりの移植です。