紀元5世紀頃のローマ兵士
Young Roman Soldier, German Origin, circa A.D.5c.

 紀元5世紀頃のローマ兵士です。この頃になると、ローマ帝国は東西に分裂してすっかり衰え、あの強力だったローマ軍も、その構成員はたいがいゲルマン傭兵から成っていて、国土防衛は、いわば元蛮族が、同類の蛮族に対しているといったありさまでした。
 ここに現わした兵士もブロンドで長髪のゲルマン系の若者で、もはやあの印象的なローマ軍団の鎧(ローリカ・セグメンタータ)も、生産システムの失われたこの時代にあっては着用することもなく、日用服であるダルマティカと長ズボンにブーツといった、当時の気候の寒冷化を示す北方的服装に変わっています。ダルマティカの下部にある四角いアップリケは、軍の階級を示すものであるとも言われていますが、定かではないようです。
 かれの剣は長くてアジア風、その吊り方も鞘の側面の複数の環を通すのではなくて、幅広い面に1つだけ取りつけた大き目の環に太いベルトを通す、やはりアジア風の、むしろ中国をすら思わせる形式です。楯もローマ伝統の長方形は捨てられ、丸型になっていますが、中心の突起の内側を握って持つ方式は同じです。
 ただひとつ、かれの被っている兜だけが、遠く古典古代の記憶を留めています。馬の毛の立て飾りをつけ、頬当てで留め、そして兜の前面には、1000年前のギリシア時代には実用だった、そしてイタリア半島のラテン人に採用されてからも形ばかりは開けられていた、あのコリント式兜の開口部の痕跡である、2つの眼の名残のデザインが残っているのです。
 例によって、会議中の落書きですが、Osprey 社の Men-at-Arms シリーズに、知識・図版ともに多くを負うています。ボールペン画を取り込み、Adobe PhotoDeluxe で処理、然る後にペインター5で彩色、再び Adobe PhotoDeluxe で加工しました。