ギリシア戦士、紀元前6世紀前半
Greek Noble Hoplite Commander,
First Half of 6th Century B.C.


●この時代のギリシアは、長かった暗黒時代もようやく終わり、ポリスが各地に成立しはじめた時代です。美術史的には、幾何学文時代からアルカイック時代に入り、陶器にはギリシア黒絵といわれる形式で、神話や生活の具象的場面が描かれた頃です。

●黒絵で描かれた人物はまだ生硬で、エジプト風に平面的ですが、それでも戦闘場面などは具体的で、とくに戦術が、重装歩兵(ホプリテース)の密集隊形に変わったことをはっきりと示しています。

●したがって社会的には、貴族寡頭政から僭主政を経て市民民主政への移行期だと思われますが、武力が参政権とイコールなこの時代、貴族や有力者の政治経済力には、なお強いものがありました。

●それを示すのがこの鎧で、青銅製のベル・クィラス(鐘型胴鎧)と脛当ては、おそらく平民にはとても手が出ないほどの高価なものだったでしょう。民主政の時代になると、もっと安価で製造と入手が容易な、リネン・クィラス(麻製胴鎧)に変わります。また脛当ては、膝まで蔽う形になります。

●兜は最も初期のコリント式で、まだ単純な形をしており、後のタイプのように頭の上にずらして被ることはできません。馬の毛の前立ては、この形以外に、アッシリア風の鉤型のものもありました。どうやって丸い兜に装着していたかは謎です。

●この人物は、どこかのポリスの僭主の若い息子、とでもいった想定です。

ボールペン原画を取り込み、ペインターで彩色しました。