☆後期授業開始 チベットから帰り、疲れも十分に取れぬ内、もう学校が始まった。M大にW大、本務校にT大。とくに先週金曜日は、1、3、4、5と授業があり、虚脱状態。 おまけに研究室のリースのコンピュータがXPに変わり、そのセッティングだけでもだいぶん時間を取られた。XPのインターフェースなど、MacOS10のたちの悪いお為ごかしで、はじめから使う気もないので、ぜんぶ元の使い慣れたNT風に戻してやった。全研究室交換なのだからそのコストも馬鹿にならず、そんな金を出す余裕があれば他に使い道もあるのでは、とも思いかけたが、それこそ経済知らずの学者バカの言いそうなことで、減価償却というものを考えれば、こうしたマシンというものは早く交換して行かない限り、かえって全学的な損になるのだ。
☆「新選組!」第三十九回 今回は、壁を乗り越えられずに自己憐憫に浸り、そのくせ人に流されやすいダメ男、周平のドラマだった。この手の人物像は、私も含め、そのあたりにいくらでもいるだろう。 死を見つめている沖田は、そのためこうした人生態度がとうてい許せず、それで極めて辛く当たる。 それに対して平助は、周平を殴りつける沖田を羽交い締めにしながら、「あなたとは違って、いくら頑張っても上達しない人だっているんだ!!」と涕泣し、源さんは「これからじゃないか」と思いやり深く周平を抱きかかえる。これらはいわば、天才に対する凡人の心の叫びといえよう。 きっとこれはまさに、演劇部とか運動部で数限りなく繰り返されてきた場面、ある種の面映い青年時代の一シーンなのだ。周平という人物は、たぶんこうしたキャラクターとして登場させるにはうってつけの役どころだったのだろう。 さてこの周平のその後というのは歴史の上ではどうやら判然とはしていないようだが、このドラマの中ではしばしば源さんに救われていることから、おそらく鳥羽伏見の戦いの中で、源さんとともに死ぬのではないだろうか。 ドラマそのものは、いくつもの筋が絡み合って緊迫した構成。まず谷兄弟が脱走し、斎藤と島田に斬られる(このあたり、子母澤寛などをうまく取り入れている)。その斎藤は暗殺者として心をさいなまれ、ニポポのような神像を彫ることで精神を安定させているが、それを左之助への祝いとするのは、何かの伏線になるかもしれない。一方、斎藤と島田について来た監察方の浅野はあまりの凄惨さに恐怖してこれも脱走を企て、周平を動揺させて仲間に引き込もうとする。周平はもちろん拒否するものの、養父近藤に一抹の不安感(自分が評価されていないのではないか)を抱き、源さんに相談をかけるが、源さんは折悪しく左之助婚礼祝いの寿司作りにかまけて相手にならない。訪ねて行ったお幸もまた、妹に再会する仕度に忙しいが、それでも近藤が周平をけっして低く評価しているのではないということを知って周平はひとまず安心する。周平は、人から評価されたり愛されているという確信が持てない男なのだ。 いよいよ妹に会うため出かけようと外に出て、手引きの山崎を待つお幸の耳に、浅野と周平の話し声が聞こえてくる。浅野にうまく利用されて脱走せざるを得なくなる周平の危機を伝えようと屯所に走るお幸。しかしこれでかの女は決定的に身体を痛めるのだ。倒れるお幸を抱きとめるのは斎藤。かれは万事を呑みこんで影のように走る。 死を意識し、鬼神のように不逞浪士を切り捲る沖田とそれに従う「人斬り」大石が、脱走の二人を発見して追う一方、斎藤の知らせを受けて急遽左之助の祝いの場から抜けた源さんと平助が、いまや道に転び倒れて大石に斬られる寸前の周平を救う。そして周平を見捨てた浅野を黙って去らせるのは、やはり神像など彫って仏心に捉えられかけている斎藤なのである。 ちなみに、「浅野は死んだ」と言う斎藤に、大石がすかさず「屍骸は?」と突っ込み、それに対して斎藤は「鴨川に落ちた」と軽くいなすが、これもまた、子母澤寛の記すところ(浅野は沖田に斬られ、死体は鴨川に蹴り込まれた)などをうまく使っている。 そうして結局周平は、源さんと平助の嘆願で助命され、谷周平として挽回を図ることとなるのである。 その間にも歴史は動き、ラスト・タイクーン慶喜が登場、捨助は見廻組佐々木只三郎のもとへ出向き(「(新選組を含め)俺をないがしろにしたヤツらをギャフンと言わせたい」─とんでもないキーパーソンになったものだ─)、竜馬とおりょうの幸せも長くは続きそうもない。 また甲子太郎と加納は密かに岩倉を訪れるが、そこにはすでに山崎の目が光っていて、ドラマはこれから高台寺党分離へと突き進み、ますます緊迫の度を加えていきそうである。
蛇足: ◆今日はみな山南走り。 ◆幹部の中ではもはや沖田だけダンダラ羽織(それもちょっと着崩して)着用。残された命を精一杯生きようとする沖田の、新選組に対する誠実さ、「誠」のあらわれという演出だろう。 ◆山崎大活躍。 ◆祝いの寿司を作る源さんと平助の場面、沖田と土方の会話の背後で、しっかりと演じていた。とくに寿司の具を入れる平助が、箸についた寿司の飯粒をちょっと取って味見/つまみ食いする芝居。 ◆「オレはいつも中心だけど」酒盛りの喧騒中から左之助のアドリブをちゃんと拾っていた。 ◆永倉は近藤も源さんもいなくなった後、さぞ土方にからんだことだろう。
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No.169
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