☆新選組! 第二十二回 又三郎退場。長州のスパイでも、悪人でもなく、軽いトリックスターだった。 「芹澤鴨の段」も大詰めに近い。腐女子サイトにもそういう意見があったが、鴨シリーズが少し間延びしすぎているのではないかと、ちらりと思ったりもする。これだけの伏線が、三谷台本の中で、どのように後半生きてくるのか、大いに期待と注目のしどころだ。 コミカル役は島田、悲惨な心理葛藤役は沖田、狂言回しは肥後守あたりか。捨助は伏線。 ところで今回は、鴨問題に絡めて、解説役が三人いたと思われる。それは、土方、山南、そして斉藤だ。土方は浪士組の意向そのものを解説し、山南は浪士組と時勢の関わりを解説し、斉藤は浪士組の抱える内面を解説する。 そこで、もし浪士組をひとりの人間、一個の人格として捉えるならば、上の分析は、つまりつぎのようなことになるだろう。 すなわち、土方は浪士組のチャイルド的エゴ(自我)、山南はアダルト的エゴで、斉藤は象徴的にしか語らないのではあるが、内心のつぶやきを湧きあがらせる源泉としてのセルフ(自己)なのである。 これらが統合されたりされなかったりする葛藤が、近藤を生かし動かしていく。 ところで、斉藤はつねに傍観者の立場にいるが、近藤や浪士組の真の性質がかいま見えるような決定的な場面には、かならず斉藤の姿がある。今回の沖田の御目付け役がそうだし、近藤が黙って通夜の線香を換えている場面に出くわすのも斉藤だ。他方斉藤は、のちには御陵衛士の中に潜入して、近藤に情報を伝えもする。 こうしたことから考えるに、三谷新選組の中では、同じ生き残り組でも永倉は表面上の、つまり事実の語り部でしかなく、真の語り部役、あるいは言い換えるならば「三谷幸喜が表現したい新選組の語り部」は、じつは斉藤に設定されていると考えられよう。
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No.120
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